第61章:「何もかも忘れてしまった」

三人称視点

深夜、クラウスは車の中でひとり座っていた。

彼は、元どおりになった銀の狼のブローチを握りしめている。

鋭く欠けた断面が掌に食い込み、血がにじんでいたが、痛みはまるで感じなかった。

歓喜と苦悶がないまぜになった感情が胸の奥から奔流のように押し寄せ、今にも彼を引き裂きそうだった。

あの娘がエマだった――それが嬉しくてたまらない。

だが同時に、尽きることのない後悔が彼を蝕んだ。

この一年、彼はエマを深く傷つけてきたのだ。

喉の奥から抑えきれない唸り声が漏れ、目尻が瞬く間に潤む。

彼は笑い、そして泣いた。闇の中へ落ちる涙には血が混じっていた。

違う。エマに真実を告げなければならない...

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