第123章

伊井瀬奈は望んでいた答えを聞き、安堵した。

車はそのまま黒川ビルの地下駐車場へと乗り入れた。二人が公の場に姿を現して以来、会社の従業員たちは二人の関係について様々な憶測を飛び交わせており、その多くは祝福の声だった。

黒川颯は肯定も否定もせず、それを默认と見なしていた。

もはや隠れる必要もない。車を降りると、黒川颯は神谷竜也からスーツケースを受け取り、伊井瀬奈と共に上階へ向かった。神谷竜也には錦園へ戻って荷物を片付け、車内の海産物をすぐに処理するよう指示した。

エレベーターは最上階へと直行し、ドアが開くと、人事部長が新たに作成した契約書を手に、すでにドアの外で待っていた。

「黒川社長...

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