第13章

「叔父様、どうしていらしたんですか?」

階下のリビングで、黒川耀司が足を組んでソファに座り、お茶を飲んでいた。彼が錦園に来るのはこれが初めてだ。

「若奥様、お目覚めですか?お爺様が朝早くから若奥様に会いたがっておられまして、旧宅に数日お泊まりいただくため、お迎えに上がるよう言いつかりました」

そう話したのは、執事の森下さんだった。

黒川耀司は頷き、ひと言で来訪の理由を説明した。

「黒川の爺様からの言いつけだ」

テーブルに淹れられたお茶は半分ほど減っており、どうやら彼女を半日近く待っていたようだ。

伊井瀬奈は耳の先を赤らめ、野原さんに尋ねた。

「お客様がいらしてたのに、どうして...

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