第141章

伊井瀬奈は気分が沈み、この後の宴会はただの飲み食いの集まりでしかなく、面白みも何もないと感じていた。いっそこのまま部屋に戻ってしまおうと思った。

二階へ上がると、階段の踊り場で男たちの口論する声が聞こえてきた。そのうちの一つの声は聞き覚えのある綾辻修也のもので、もう一つは、間違いなく武藤拓真だった。

伊井瀬奈が最後の二段を上りきって角を曲がると、廊下の突き当たりで、二人の男が何やら揉めているのが見えた。

綾辻修也は眉間に深い皺を寄せている。

二人とも伊井瀬奈の姿に気づき、武藤拓真が憤然と言った。

「義姉さんに是非を問おうじゃないか。お前みたいに理不尽な奴はいない！」

名を呼ばれた...