第157章

黒川颯が去った後、病室では再び家族会議が始まっていた。

羽鳥汐里は、床を行ったり来たりしている羽鳥業成を見て、頭が痛くなった。

「お父さん、早く何か考えてよ。回らないで、目が回っちゃう」

羽鳥業成はそれでも歩みを止めず、頭を高速で回転させていた。黒川颯が本気になれば、この件は厄介なことになる。一体誰が彼を騙し通せるというのか?

高橋蘭が傍らで慰めるように言った。

「汐里、焦らないで。今の私たちの主な目的は、まず婚姻届を出すことよ。この保障をしっかり手に入れておけば、後で黒川颯が何かに気づいたとしても、彼の子どものことを考えれば、あまりひどいことはしないはず。子どもが無事に生まれれば...

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