第17章

黒川颯は腕の中の従順な女を真っ直ぐに見つめ、その瞳の奥に情欲を灯した。大きな手が羽鳥汐里の頬をそっと滑る。

「離婚を急かさなくなったのか?」

羽鳥汐里は数秒呆然とし、彼が自分を伊井瀬奈と勘違いしているのだと気づいた。

あのクズ男!

黒川颯がようやく心から自分を受け入れ、大人の男が好きな女を独占したいと望むように、自分を求めてくれているのだと、彼女は内心で歓喜し、身も心も捧げる準備をしていた。だが、彼女の気持ちが昂ったその時、現実は彼女を失望させた。

束の間、心を痛めたが、すぐに冷静さを取り戻した。

黒川颯は彼女の顔を両手で包み込み、何度もキスを繰り返す。しかし、数回キスをしても腕...

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