第237章 撤案しよう

伊井月が遊びに行ったのを見てから、伊井真はソファの方へと腰を下ろした。

「瀬奈、何かあったのか?」

伊井瀬奈はずっと感情を抑えつけていたが、伊井真の気遣わしげな問いかけに、心の防御線がにわかに崩れ落ちた。

「お兄ちゃん、黒川颯に会ったの。あの子、子供たちを奪いに来るんじゃないかしら?」

伊井真の表情が険しくなる。

「お前のことに気づいたのか?」

伊井瀬奈は目を赤くして頷いた。今の彼女は精神状態がひどく悪く、加えて最近は不眠が続いており、心身ともに崩壊寸前だった。

伊井真は妹を不憫に思うと同時に、あのクソ男がのうのうとS市に現れ、一家の平穏な生活を乱したことに腹を立てた。

「安...

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