第24章

伊井瀬奈はシャツの襟元を整え、両手を彼の胸に当てた。

「変なこと言わないで。お風呂、沸かしてきてあげるから」

黒川颯は彼女を抱きしめたまま腕を緩めない。

「俺の目は節穴じゃない。お前の体がどんなかなんて、分からないわけないだろ。俺に隠れてこっそり整形でもしたのか?」

話はどんどん常軌を逸していく。伊井瀬奈は彼が前回口にした『貧乏神』という言葉が忘れられずにいた。

「黒川颯、よく見て。私は貧乏神じゃない。違う! 整形もしてない。本物よ!」

黒川颯の喉から、ふっと軽い笑いが漏れた。

「本物かどうかは、俺が確かめないと分からないな。お前がこの間、俺に触らせなかったのは、こっそり...

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