第263章

伊井瀬奈は再度、念を押した。

「消して!」

黒川颯は首の後ろをさすりながら、不満げな顔で言った。

「瀬奈、これは俺のパソコンだ」

言葉の端々に、自分のパソコンの中身は自分で決めると、彼女の一言で本当に消すことなどできない、というニュアンスが滲んでいた。

なにせ、それらの写真の一部は彼女の古いスマホからコピーしたもので、残りは彼が何気なく撮った日常の断片なのだ。彼女がいないこの四年、それらの写真が彼と共に千以上の日々を過ごしてきた。彼にとって、それは特別な意味を持っていた。

伊井瀬奈は顔をこわばらせ、笑顔一つ見せようとしない。

「黒川社長、あなたのこういう行為は私の肖像権を侵害し...

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