第277章

ハイヒールのコツ、コツという音が近づいてくるにつれて、伊井瀬奈の顔は青ざめ、拳を固く握りしめた。

ドアの外では、黒川織江が陶山莉緒の腕に絡みつき、きらびやかな装いで個室へと向かってくる。

マネージャーは伊井瀬奈たちの説得を諦め、今度は向き直って二人の厄介な大物へと頭を下げた。

「黒川様、黒川お嬢様、誠に申し訳ございません。個室のお客様がちょうどお食事の最中でして、お席を移動していただくのが難しく……向かいの豪華個室をご用意いたしますので、いかがでしょうか。お食事代は結構ですので、後日、黒川社長にどうかご口添えを……当レストランが開業できたのも、黒川社長のお友達のお力添えあってのことです...

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