第279章

「黒川社長、南部のあの土地、入札しますか?」

黒川颯はほとんど考えることなく答えた。

「する。しない理由がないだろう」

伊井真が目をつけた土地だ。何としても落札しなければならない。何に使うかは後で考えればいい。とにかく、妻子を捨てたあのクソ野郎に一泡吹かせてやる。理由もなく黒川グループにちょっかいを出してきやがって。黒川グループが誰にでも喧嘩を売れる相手だとでも思ったのか?

電話を切る。

黒川颯が一階に下りると、フロントから聞き覚えのある声がした。振り返ると、やはり彼女だった。

伊井瀬奈が、自分より少し年上に見える男と会計でもめている。互いに譲らず引っ張り合っていたが、結局フロン...

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