第282章

伊井瀬奈はおじさんの行動に心底怯え、顔を青ざめさせた。

「おじさん、やめてください、外には警備員がいます」

 黒川耀司は彼女の言葉を全く意に介さず、溜め込んでいた思いの丈を一方的に語り始めた。二人の会話は全く噛み合っていない。

「瀬奈、四年前、私は君までこの世を去ったのだと思っていた。幸い、それは偽りだった。これからはもう、君を危険な目には遭わせない。私は……」

 伊井瀬奈は両手を彼の胸に当てて押し返した。

「おじさん、早く離れてください。人を呼びますよ」

 黒川耀司は眼鏡を少し押し上げ、一歩後ろに下がると、洗面台に背を預けた。

「すまない、怖がらせてしまった。私が彼女に会いた...

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