第284章

ギッと音を立ててドアが開き、神谷竜也は伊井瀬奈を先に通すために身を引いた。

リビングは明かりがついており、静まり返っていた。

神谷竜也も中に入ると、靴箱をしばらくごそごそと漁り、新品の男性用スリッパを一足取り出した。

「奥様、黒川社長のところには男性用の靴しかございません。ひとまずこちらで我慢していただけますでしょうか。明日、私が新しいものを買ってまいります」

伊井瀬奈はそのスリッパを見て、一瞬呆然とした。以前、彼女も家で彼のスリッパを履いたことがあった。ある時、シャワーを浴びたついでに自分のスリッパも洗ってしまい、彼のスリッパを履いて出てきたのだが、そのスリッパが二度と家で目にする...

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