第288章

「俺は行かない。先に薬を飲め」

 黒川颯が必死に目を開けると、伊井瀬奈は直接彼の口元に薬を運んだ。やっとのことで、この解熱剤を飲ませることができた。

 伊井瀬奈は水を持ってきて、彼に口をすすがせようとしたが、ほんの数秒の間に、彼はまた眠りに落ちていた。しかし、その手はなおも彼女を固く掴んでおり、寝ている隙に彼女が逃げてしまうのを恐れているかのようだ。

 彼は今、熱があるだけでなく、全身が奇妙に痒く、胃も焼けるように痛む。朦朧とした意識の中でも、彼女が去ってしまうことを心配していた。

 伊井瀬奈は深く息をつき、そっとベッドのそばに腰を下ろした。

 三十分ほどして、神谷竜也と鳥川先生が...

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