第289章

伊井瀬奈は、羽鳥汐里がこれほど早く動くとは思いもよらなかった。

彼女は鳳さんの電話をかけた。コール音がしばらく鳴ってから、ようやく相手が出た。

気だるげな声が耳に入る。

「瀬奈、こんなに朝早くからどうした? ランニングにでも誘ってくれるのか?」

「鳳さん、ごめんなさい。もう起きている時間かと思って」

伊井瀬奈は、鳳響司が羽鳥グループの提携先とゴルフの約束をしていると言っていたのをはっきりと覚えていた。このようなビジネス絡みのプライベートな集まりには、彼も重きを置いているだろうと思っていたのだ。

少なくとも、起きて身支度を整え、きちんとした服装をしているはずだと。

鳳響司は息の混...

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