第291章

まもなく、松山拓也のアシスタントがワゴンを押してきた。冷えたフルーツ、ドリンク、ミネラルウォーター、小さなデザートまで、至れり尽くせりだ。

伊井瀬奈が静かに座っていると、携帯が鳴った。神谷竜也からのメッセージだった。

【奥様、黒川社長がお目覚めになりましたが、後ほどこちらへお越しになりますか?】

伊井瀬奈はこめかみを揉んだ。徹夜のツケが回ってきたのか、頭がズキズキと痛む。

【今、手が離せなくて行けないの。あなたと鳥川さんで面倒を見てあげて】

携帯の向こう側では、黒川颯がベッドに横たわり、神谷竜也が読み上げる伊井瀬奈からの返信を聞いていた。彼の眼差しは、瞬く間に光を失う。やはり眠るべ...

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