第294章

黒川の爺様は漸く我に返り、一瞬映った可憐な姿に疑念を抱いた。

「待て! お前の隣に座っているのは誰だ?」

 黒川颯は内心ほくそ笑む。

「爺様、瀬奈です」

 黒川の爺様はそれを聞くと、途端に口角を上げ、その笑みは後頭部にまで届きそうなほどだった。

「本当に瀬奈か。どれ、瀬奈がここ数年で綺麗になったか見せてみろ」

 黒川颯は、まるで伊井瀬奈の同意を求めるかのように視線を送った。伊井瀬奈は隅の方で縮こまり、半日も声を出せずにいた。主に、どんな気持ちで爺様に顔を合わせればいいのか分からず、まだ心の準備ができていなかったのだ。

 こんな形で爺様に見つかってしまった。

 彼女は少し身を乗...

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