第46章

伊井瀬奈は少し感傷的に首を横に振った。彼女自身、父の愛に欠けた人生を送ってきたのだ。

羽鳥業成が外の女との間に羽鳥汐里をもうけ、その母娘を家に迎え入れた日から、彼女は父も家もない子供になった。そんな自分が、お腹の子に自分と同じような思いをさせることなど、許せるはずがない。

想像するだけで、息が詰まりそうになる。

あんな父親ならいない方がましだ。死んだとでも思った方が、幼い頃から偏愛され、不公平な扱いを受けるよりずっといい。彼女はそれをはっきりと分かっていた。

綾辻マナの先ほどの言葉は、彼女に羽鳥汐里のことを連想させた。

彼女がこの前送ってきた妊婦検診の結果から計算すると、彼女のお腹...

ログインして続きを読む