第83章

 カフェの一角の静けさを破る騒ぎに、今や客全員の視線が彼女たちのテーブルへと集中した。

 四方八方から注がれる視線を浴びながら、汐里はまるで化け物でも見るかのような眼差しを向けられているのを感じた。その眼差しは侮蔑と嘲笑に満ち、彼女を浮気相手という名の晒し台に磔にしているかのようだ。

「浮気相手なんかじゃない、あの子よ、あの子が……」

 彼女はそう呟きながら、ずるずるとその場に崩れ落ち意識を失った。

 瀬奈は彼女が救急車で運ばれていくのを見届けると、業成に電話をかけた。もし汐里に因縁をつけられる心配がなければ、一生この番号にかけることなどなかっただろう。

 案の定、業成は颯に電話で...

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