第90章

「シャワーを浴びるのに服を着る人なんている?」

伊井瀬奈は振り返って隣に座る義理の叔父を一瞥し、穴があったら入りたい気持ちになった。彼女は携帯を手に二階へ上がり、黒川颯が皆を気まずくさせるような際どい言葉を言い出さないかと気が気ではなかった。

「私、旧宅にいるの」

彼女はわざとそう言って、変な話はできないと彼に釘を刺した。

向こう側で、黒川颯はタオルで髪を拭いている。

「何を緊張してるんだ。ただ、お前の家で使ってるシャンプーがどこのものか聞きたかっただけだ。神谷竜也に同じものを買ってこさせようと思ってな。ホテルのやつは匂いがきつすぎる」

話しているうちに、伊井瀬奈はすでに二階の自...

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