第50章 放してやれ

ジャレッド視点

タクシーが停まるのが見えた。彼女がドアを開けるのが見えた。迷いのない背中が、赤く焼けた刃みたいに胸を抉る。

――行くつもりだ。

その一語が、混沌とした頭の中で雷鳴みたいに炸裂した。

理性がぷつんと切れ、血が一気に頭へ上る。自分がどうやって車を始動させ、どうやってアクセルを踏み込んだのか、覚えていない。

ただ一つだけ分かっている。

このまま行かせるわけにはいかない。

タイヤが地面を削り、甲高い悲鳴を上げた。黒い車体が制御を失った稲妻みたいに滑り込む。

ドアを蹴るように開け、抑えきれない殺気をまとったまま、彼女の前へ躍り出た。

怯えると思った。怒ると思った。昔み...

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