第8章 ただの嘘

スローン視点

背後から、せわしない足音が迫ってきた。振り返る間もなく、腕をがしっと掴まれる。

振り向くと、ジャレッドだった。

「スローン」

低い声に、わずかな悔いが滲む。

「さっきは……俺が短気だった。悪かった」

私は淡々と腕を引き抜いた。

「謝らなくていい。私には、受け取る資格もないから」

冷えた返事が刺さったのか、ジャレッドは一拍沈黙し――胸元から黒いカードを取り出して、私の前に差し出した。

「これ、持ってろ。暗証番号はお前の誕生日だ。欲しいものがあるなら買え。無理するな」

……また、それ。

物で埋め合わせる。いつだって、そういうやり方。

無制限の黒が、やけに眩し...

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