第16章

その手はとても美しく、ぼんやりと瑩白の光沢を放っていた。まるで闇夜を照らす月のようで、人に氷を連想させ、またそれ以上に純粋で神聖な何かを思わせた。

唐沢優子自身はここにいるべきではないと気づいていた。基地の治療エリアにある病床にいるはずだ。休息を取り、眠っている最中なのだから。

奇妙なことに、自分が夢を見ているとハッキリ認識しているのに、目が覚めない。

腰に感じる冷たく湿った感触があまりにリアルで、まるで魂が何か強大で未知の力に囚われているかのようだった。

ここはどこ?

唐沢優子は茫然とあたりを見回す。振り返ろうとしても、体は硬直して微動だにしない。まるで背後にいる何者かが姿を見せ...

ログインして続きを読む