第19章

飼い主に会いたい。アメフラシはもうずっと我慢していた。

だから、新しく担当になった男性飼育員に、思わず頼み込んでしまったのだ。

扉が閉まる音を聞き、少年はちらりと視線を向け、期待に満ちた眼差しで水底から浮かび上がった。「どう、だった?」

景山凛川は深く息を吸い込み、顔に貼り付けた偽りの表情を保つ。

「彼女を呼びに行ったんだが」男は言葉を濁し、困り果てた様子を見せる。「でも、来てくれなくてね。君には会いたくないみたいだ」

アメフラシの目は、みるみるうちに赤くなった。彼が外部の反応にこれほど強く出たのは初めてで、危うく育成水槽から這い出してしまいそうなほどだった。

男は彼の繊細で白い...

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