第20章

奥深くから微かな物音が聞こえる。何らかの生き物がまだ逃げ惑っているようだ。肉体がガラスの破片を踏み砕く、微かで乾いた音が、やけにはっきりと響いた。

唐沢優子はこれ以上進むべきではないと悟り、足を止めた。そっと壁に身を寄せ、可能な限り存在感を消す。

床には揺らめく水明かりとその影が映っていた。唐沢優子は顔を上げ、曲がり角の先にある高さ十数メートルはあろうかという巨大なガラス容器の向こうに、銀色の制服を纏った研究員たちが数多く漂っているのを目にした。

彼らの体は暗青色の海水に浸かっている。五体満足の者もいれば、無残に損壊している者もいる。ある者は内臓が体外に飛び出し、長い腸が帯のよ...

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