第25章

唐沢優子の脳に鋭い痛みが走る。未知の力が強引に彼女の意志を改竄しようとしているようで、苦痛に苛まれる。

「こんなはずじゃない、理不尽だわ……」

S区の実験体は重火器ですら殺すことはできない。ならば、保安要員たちが脱出できるはずもないのだ。

その時、映像がまた変わった。

時間は女が保安要員を突き飛ばす前に戻る。二体の実験体は互いを見つけ、戦闘を開始し、その隙に男と女は脱出に成功した。

時間の歯車が、この瞬間に固定される。

彼らは一斉に振り返り、再び問いかけた。「じゃあ、これならどうだ?」

唐沢優子の目の前が真っ暗になり、力が抜ける。水槽に落下する寸前、何者かに抱きしめられ、その腕...

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