第28章

彼女はできる限り優しく傷口に薬を塗ったが、これほど酷い傷ではどんなに慎重に扱っても彼を痛めつけてしまう。人魚は眉を顰め、顔を背けた。濡れた鎖骨に髪が張り付き、この上なくセクシーで優美な弧を描いている。

痛い。

見ているだけで、彼がとても痛がっているのが伝わってくる。

唐沢優子は意識を集中させ、丁寧に軟膏を塗り込んでいく。

それから、引き裂かれた尾鰭を合わせ、清潔なガーゼを何層にも重ねて断裂した尾を包帯で巻いた。彼女にできるのは、これくらいの簡単な処置だけだ。人魚の尾を治すには、S区の機能が正常に戻るのを待つしかない。

クラゲが焦ったように泳ぎ回り、その柔らかな触手がガラス壁を何度も...

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