第44章

唐沢優子は困惑しながら、彼の口から自分の髪を引き抜いた。

「どうしてそんなに急に怖がるの?」

青年は彼女の髪を失うと、唇を真一文字に結んだ。濡れた睫毛には水滴がついており、まるで絶えず震える蝶の羽のようだ。その姿は、本気でひどく怯えているように見える。

唐沢優子はその視線に、なぜか罪悪感を覚え、仕方なく彼の頭をぽんぽんと叩いた。「もう大丈夫。怖くない、怖くないから。何でもないわ。先に私を降ろしてくれない?」

しかし、そう言うと、彼の表情はさらに悲しげになった。

まるで彼女を放すことが、この世の終わりのような大打撃であるかのように。

彼は言った。「いやだ」

そして再び彼女の首筋に...

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