第67章

車を降りると、唐沢優子はアルセルの様子がおかしいことに気づいた。

彼女の目は赤く、どこか上の空だった。

唐沢優子は訝しげに尋ねる。「アルセル、どうしたの?」

アルセルは唇を引き結び、足元の小石を蹴った。

「最悪よ。さっき桜井智、あの薄情男を見ちゃったの。それで、ちょっと悲しいことを思い出して」

唐沢優子はほっと息をついた。

「桜井智に?いつ?」

元カレに会ったということか。

アルセルは拳を握りしめ、歯ぎしりする。「幻覚の中の、あの変な世界でよ。あいつに会って、二人で話までしたの」

歩き続けていると、唐沢優子がついてきていないことに気づいた。

アルセルは振り返り、不思議そう...

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