第70章

照明が狂ったように明滅し、微かな電流音を立てた。

壁の隅には、正体を見極められないぼんやりとした黒い影が現れる。

人魚はそれまでの柔和で無害な雰囲気を収め、ゆっくりと腕を伸ばし、静かに首を巡らせた。そして無表情のまま、水槽の中のSS-実験体17号を見据える。

相手もまた彼を見ていた。その純粋で濃密な墨緑色の瞳には、殺戮的な破壊衝動が浮かんでいる。

空気は静まり返り、凝滞していた。水槽の亀裂が広がっていく。

略奪、冷酷、殺戮。それらは異世界から来た彼らの冷たい血に刻み込まれている。彼らは決して友好的な種族ではなく、社会性を持つ生物でもない。

人魚はそっと手を上げ、蒼白い指を虚空でつ...

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