第97章

朝の臨時実験室へと走る。あまりに急いでいたせいか、唐沢優子は肩に誰かがぶつかってきたような衝撃を感じ、よろめいて半歩後ずさった。

「すみません……」

そう言って振り返ったが、背後には誰もいなかった。

廊下には唐沢優子一人きり。彼女にぶつかった者など誰もいない。

錯覚だろうか?

彼女は肩を揉みながら、再び臨時オフィスへと走り出した。

津波と電力供給の麻痺により、唐沢優子はもう何日も十七号に会っていなかった。ドアを押し開けると、隅に倒れている蒼白な青年の姿が目に飛び込んできて、彼女の心臓は一気に跳ね上がった。

「アセイラン……」

彼女は駆け寄り、青年の肩を支える。その...

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