第137章 芳坂りり

個室の中は、針が落ちる音さえ聞こえそうなほど静まり返り、異様で重苦しい空気が漂っていた。

「実はですね」

烏丸達也は横目で恐る恐る黒崎統夜の様子を窺った。

「以前、氷室ジンに聞いたことがあるんです。どうやったらあんなに女性と軽妙なトークができるのかと」

黒崎統夜は平静を装っていたが、ソファに置かれた指先は内側に丸まり、強張っていた。

彼はあくまで何気ない風を装って尋ねた。

「奴は何と?」

烏丸達也は身を乗り出し、掌を口元に添えて声を潜めた。

「練習あるのみ、だそうです」

「いろんな女性と会話を重ねれば、彼女たちが何を好み、何を嫌うかがすぐに分かると」

「経験さえ積めば、あ...

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