第143章 ボタンを外してもいいですか?

そもそも彼女は、氷室ジンのことなど欠片も好きではなかったのだ。

「他に好きな男でもできたのか?」

黒崎統夜が尋ねた。

「違います!」

図星を突かれたのか、速水ミオは激しく狼狽した。

瞳は泳ぎ、瞼は痙攣し、互いに絡め合わせた指先は血が滲むほど赤くなっている。

潤んだ瞳は救いを求めて彷徨い、桜色の唇は何かを言いかけては閉じ、また開く。否定したいのに、適切な言葉が見つからないのだ。

その姿はまるで、天敵に追い詰められ、必死に逃げ道を探す小ウサギそのものだった。

黒崎統夜は口元の笑みを深め、威圧するように一歩踏み出した。

彼が覆いかぶさるように近づいてきて初めて、速水ミオは気づいた...

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