第145章 黒崎社長、恋敵が当てにならないのは高校生でも知っている

「いいえ、滅相もございません」

速水ミオは首を垂れて涙をこぼし、顔の前でかぶりを振るように両手を揺らした。

潤んだ瞳で周囲を見回し、薄い唇を一文字に引き結ぶ。顎先には涙の粒が危うげに震えていた。

「すべて私が悪いのです」

彼女は弱々しく応じた。

「私が奥様のご機嫌を損ねてしまったのがいけないのです。奥様が私に腹を立てるのも無理はありません」

「ですが、奥様は黒崎社長の実のお母様ではありませんか。これほど大勢の方々の前でそのようなことを仰って、黒崎社長の御名誉に傷がつくとはお考えにならないのですか?」

周囲の人々が黒崎奥様に向ける視線が、次第に変わり始めた。

速水ミオは唇を軽く...

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