第161章 大人は子供より鈍感

ベッドの縁(へり)をつかむ指先が、小刻みに震えている。

速水ミオはゆっくりと顔を上げた。鼻翼(びよく)が微かに動き、長い睫毛(まつげ)が頼りなげに揺れる。

「ママ、お医者様にカノンを診せてあげて。私が傍にいるから、ね?」

黒崎ユナがおずおずと問いかけた。

ミオは首を傾げ、眉をひそめてその幼い顔を見つめ、視線を止める。

ユナは美しい弧を描くように口角を上げ、静かにミオを見つめ返していた。少し上を向いた小さな顔。焦る様子もなく、まるでそこには誰も存在しないかのような静謐(せいひつ)さを湛えている。

黒崎ユナと速水カノンは、あまりにも似すぎていた。

サクランボのような唇、丸みを帯びた...

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