第176章 その人は桜ヶ丘にいる可能性が高い

机に向かってはいるものの、速水ミオの心はここになかった。意識はずっと遠く、九霄の彼方へと飛んでしまっていた。

一時間以上が経過しても、スケッチブックには頼りない線が数本引かれているだけだ。階下の物音ばかり気にして、デザインになど集中できるはずもなかった。

日が落ちて辺りが暗くなり始めた頃、ようやく車の止まる音が聞こえた。

ミオは弾かれたように立ち上がり、ソファに座っていた黒崎統夜が反応する隙も与えず、ドアを開けて飛び出した。

階段を駆け下りる足音がドタバタと響く。

「どう? 人は見つかった?」

まだ姿も見えないうちから、彼女の切羽詰まった声が飛んだ。

彼女が踊り場を回ったところ...

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