第177章 勝つことのみ許される

アンナがなおも何か言おうとしたのを、黒崎利浩は片手を上げて制した。

彼は冷ややかな笑みを浮かべ、小首を傾げて嘲る。

「速水ナナ、そこまでして黒崎家に未練があるとはな」

書斎にいるこの女こそ、つい先ほど黒崎統夜に無理やり離婚合意書への署名をさせられた速水ナナだ。

彼女が署名をしたからこそ、統夜は『慈悲深く』彼女を解放してやったのだ。

二人の離婚はまだ公になっていないが、実家である速水家は当然事情を知っている。

実家に戻ったナナを待っていたのは、両親からの冷遇と、事あるごとに浴びせられる嫌味だった。あの家には、もう彼女の居場所などなかったのだ。

追い詰められた彼女に救いの手を差し伸...

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