第183章 ミオ、ありがとう

ちょっとしたハプニングなど、黒崎統夜の上機嫌には何の影響も及ぼさなかった。

速水ミオを会社へと送る車中、彼は終始口元に笑みを湛え、チラチラと意味ありげにミオの顔を盗み見ている。その熱っぽい視線には、ベテランの運転手でさえ思わずバックミラー越しに二度見してしまうほどだった。

ミオは居心地の悪さに身を縮こまらせ、今朝の大胆な行動を激しく後悔した。

彼女は眉をひそめ、努めて低い声で問う。

「……何? さっきから私の顔ばかり見て」

普段は沈着冷静なはずの黒崎統夜だが、今の彼はまるで恋を知ったばかりの少年のようだった。

「綺麗だから」

あまりに直球なその言葉に、運転手の方が狼狽してしまい...

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