第200章 彼は母にプロポーズしたことがある

翌日、佐波秀信は退院の運びとなった。

会社での仕事がある黒崎統夜は、烏丸達也に命じて部下を付け、佐波秀信と速水ミオを別荘まで送り届けさせた。

車列が別荘の正門前に止まる。

速水ミオが車を降りようと振り返ると、隣の佐波秀信が眉間に深い皺を刻み、重苦しい眼差しで黒崎家の別荘を凝視していた。

ドアのアームレストに置かれた指は白くなるほど強く蜷局(とぐろ)を巻き、手の甲には青筋が浮き上がっている。

黒崎利浩の屋敷の地下室に長く監禁されていた彼だ。この手の豪邸に対して、拒絶反応を示しているのかもしれない。

速水ミオは彼の袖を軽く引くと、声を潜めた。

「先輩。もしここに住むのが辛いなら、私...

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