第97章 男を誘惑する手口はさすがだ

第6章

速水ミオは足取りも覚束ないままクラウンプラザホテルを後にした。運転できるような精神状態ではなく、道端でタクシーを拾うと、そのまま『LMジュエリー』へと向かった。

今日は水曜日。LMジュエリーでは毎週の定例会議が行われているはずだ。

速水ミオは八階にある大スタジオへ直行した。

受付のパーティション越しに、会議中の氷室ジンの声が聞こえてくる。低く、磁力を帯びたような魅力的な声。笑う時は朗らかで、人を叱責する時は怒鳴らずとも威厳を感じさせる重々しさがある。

あの時の声と、六割がた重なっていた。

速水ミオの足が、鉛のように重くなり、どうしても前へ踏み出せない。

ただのオーナーだ...

ログインして続きを読む