戦い

エロナ視点

トリスタンがVFSビルの外の縁石に車を寄せると、わたしは神経質に指を組んだ。朝の日差しが彼の色付きの車の窓から差し込み、そのシャープな顎のラインに金色の光を落としていた。彼は優しい微笑みを浮かべてわたしの方を向き、手を伸ばしてわたしの髪を一房、耳にかけてくれた。

「今日は講堂で今度のショーの練習をするんだ。もうすぐだからね」彼はわたしから手を離しながら、落ち着いた声で言った。その落ち着きの裏にある緊張、彼にのしかかる期待の重圧を感じ取れた。

「あなたならきっとうまくやれるわ」心からの信頼を込めて言った。本心だった。彼はステージと観客のために生まれてきたような人なのだ、たと...

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