第6章

車内の空気は、まるで凝固してしまいそうなほど重苦しかった。

藤原常宏は視線を彷徨わせ、必死に小野知世子との関係を説明している。

「綾香、知世子は藤原家が援助しているただの女子学生で、俺に憧れてるだけの女の子なんだ。インスタグラムの写真は仕事上の付き合いで、特別な意味なんて何もない」

彼は私の手を握りしめた。

「もう何年も君を愛してきたんだ。もうすぐ結婚するじゃないか。俺を信じてくれ」

奇妙な感覚だった。彼に手を握られているのに、まるで知らない誰かに触れられているかのようだ。

私はそっと手を引き抜き、静かに言った。

「やっぱり、結婚式はやめましょうか」

彼の表情は、...

ログインして続きを読む