第7章
ロンドン芸術大学の廊下に、私のハイヒールの音が小気味良いリズムを刻む。
「西村教授、来週の展覧会の準備はいかがですか?」
通りすがりの学生が恭しく挨拶してきた。
「ええ、すべて順調よ。心配してくれてありがとう」
私は微笑み返し、そのままオフィスへと歩き続けた。
この三年間、私は服飾デザインの教育と創作に全身全霊を捧げてきた。あの引き裂かれたウェディングドレスは、私のアーティスト人生の転換点となった。痛みはインスピレーションに、裏切りは創作の糧へと変わったのだ。
今や私は、尊敬を集める客員教授となり、『ファッション界のデザイン新鋭』という肩書きも手に入れた。
夜、親友...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
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