第35章 彼女だ

冷笑を浮かべたまま、男は窓の外へ視線を流した。

案の定、フード付きのパーカーを羽織った細い背中が見える。人波を縫うように、角を曲がってあっという間に消えていった。

向かいの女が、興味津々といった顔で身を乗り出す。

「どうしたの、雅哉? 誰? ていうか、誰かがお会計してくれたの? しかも女の人? ねえ、教えてよ。彼女なの?」

古川雅哉は視線を戻し、ナプキンで口元を拭う。機嫌がみるみる良くなっていくのが、顔に出ていた。

「ツケを回収しに来た取り立て屋だ」

そう言い終えると、口角に薄い弧が刻まれる。

一食奢った程度でチャラになると思ったのか。今井心晴――ずいぶん都合よく考えるじゃない...

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