第40章 大らかになろう

彼女は果物籠をテーブルに置くと、深々と頭を下げ、そのまま背を向けた。今にも命の灯が消えそうな人間のように、ひどく侘しい背中だった。

「待ちなさい」

今井茂雄が呼び止める。先ほどまでの険のある声音は、わずかに和らいでいた。

「そこまで具合が悪いなら、もうあちこち出歩くな。家でちゃんと静養しろ。薬が足りないなら家に言え」

「ありがとう、お父さん……」

今井心晴は振り返り、かすかに弱々しい笑みを浮かべた。

その光景を見て、ベッドに横たわる今井優奈は、腸が煮えくり返る思いだった。

――このクズ。

どこまで芝居がうまいのよ。

さっき外来ロビーで消火器をぶちまけたときの、あの剣幕はどこ...

ログインして続きを読む