第55章 完璧な布石

「こっちの……たぶん……たぶんリフォームのときにどこか触っちゃったみたいで……と、とにかく早く戻ってきてください! 元栓は閉めましたけど、中がもう水だらけで……!」

電話口の声を聞いた瞬間、今井心晴は怒りで息が詰まりかけた。胸の奥に火の玉を押し込まれたみたいに、内臓の隅々までじりじり焼ける。

「……分かった。すぐ帰る!」

言い捨てるように通話を切り、タクシーを呼ぼうとした、そのとき。

ぶるる、とスマホがまた震えた。

相手は古川雅哉。

「……もしもし」

不機嫌を隠しもせずに出ると、耳元にのんびりした声が落ちてくる。

「家、水浸しになったって?」

「古川雅哉! 笑いに来たわけ?...

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