第57章 彼女の才能

口ではそう言ってみせたものの、今井心晴の胸の内は橋本恵理の言葉にかき乱され、ぐちゃぐちゃに絡まった糸みたいになっていた。

あのブラック資本家――毒舌の塊みたいな古川雅哉が、感情?

冗談じゃない。たぶん、彼女を助けることで、みっともなく打ちのめされたあとにそれでも歯を食いしばって起き上がる姿を眺めたいだけだ。自分の悪趣味な勝負欲を満たすために。

それから数日、クラウドトップ・マナーのメンテナンスチームが入り、水浸しになったザ・ミカゲの全面修復が始まった。

今井心晴は耳の怪我で安静が必要だったうえ、身に覚えのない赤い発疹もレイチェル教授の薬を塗っていくうちに引いてきた。だから彼女は誰にも...

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