第60章 絶対に彼女を楽にはさせない

今井心晴は掛け布団を跳ねのけて起き上がり、フロア・トゥ・シーリングの窓辺へ歩いた。

クラウドトップ・マナーの、外からは覗けないほど凝ったアイアンゲート。その隙間越しに見えたのは、年季の入った黒い車――やはり来ている。

車の脇で焦れたように歩き回っているのは今井茂雄。少し離れたところに今井優奈が立ち、いかにも安っぽい袋入りのプレゼントを手に、いつもの「か弱い顔」を貼りつけている。

ただし、いつもの作り込んだ精巧さはない。

今の今井優奈はどこかやつれていて、眉間の奥に、行き止まりに追い詰められた焦燥が隠しきれなかった。

「入れて」

今井心晴はシルクのバスローブを羽織り、短い髪を無造作...

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