第6章
ンジャメナ空港の熱波が、見えない壁のように千鶴の身体に激しくぶつかってきた。
スーツケースを引きずってターミナルビルを出ると、刺すような日差しに思わず目を細める。気温は四十二度。空気には埃の匂いが満ちていた。
これがアフリカ。
これが彼女の選んだ自由。
「Taxi? Taxi?」
数人の現地ドライバーが、フランス語とアラビア語が混じった訛りで叫びながら囲んできた。
千鶴は一瞬、戸惑った。
突如として、自分がごく基本的なフランス語さえつっかえつっかえでしか話せないことに気づいたのだ。
「Je vais au……」
彼女はスマホのアドレスを取り出して見せる。
...
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