第8章

砂漠の嵐は、なんの前触れもなくやってきた。

千鶴がテントの中で岩芯サンプルを整理していると、不意に携帯が震えた——十三件の不在着信、すべて宗谷からだった。彼女は画面を睨みつけ、指先を通話ボタンの上で彷徨わせたが、結局は携帯を置いた。

「千鶴!」

大地が血相を変えてテントに飛び込んできた。

「基地の外に人が来てる。あんたの旦那さんだって」

千鶴の手が震え、岩芯サンプルが危うく地面に落ちそうになった。

「どうして彼が……」

「俺にも分からない」

大地の口調は複雑だった。

「今、会議室にいて、どうしても君に会いたいって」

千鶴は深く息を吸い、手元の作業を中断した。

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